「丘の上の人殺しの家」別役実・スズキコージ

丘の上の人殺しの家

丘の上の人殺しの家


「丘の上の人殺しの家」。誰もが思うのは、絵本のタイトルとしては、いささか物騒だということ。 物語は、丘の上の家に仲良く暮らすユーモラスな三兄弟が「殺され方のメニュー」をお客が自分で選べる一種サービス業のような「人殺し」を商売にしているという剣呑な設定。ネタバレになってしまいますが、当然、待てど暮らせど「殺されたい」という奇特なお客さんはただの一人も来ません。それどころか今までただのひとりも殺していないという有り様。いったいどうしてだろうと三兄弟が頭を抱えて嘆いているところに、とうとうお婆さんがお客として来ます。しかしこのお婆さんは普通のお婆さんではなく、不死身のアメコミのヒーローみたいなお婆さんでワニを仕掛ければ、逆にワニにかみついたり、ギロチンの刃が首に当たると刃が欠けたり、針天井が降ってくるベッドでもスヤスヤと熟睡する始末。こりゃ無理だと気のいい三兄弟は、お婆さんを街まで送りにいきます。しかしその道すがら教会の手前でお婆さんは天に召されてしまうのでした。要するに、「人を死なせること」において「神様」にはその「絶対性」も含めてその「種類」も「方法」もいわゆる「人殺し」が勝つことができない。だから「人殺し」は無意味なんだみたいな話だと私は解釈しました。 スズキコージ愛嬌のある可愛らしくて躍動感ある絵がストーリーの陰惨さを和らげています。