「Empty Chair」ジェフリー・ディーヴァ

エンプティー・チェア 下 (文春文庫)

エンプティー・チェア 下 (文春文庫)

当代人気作家の昔の作品。先行して読んだ「グリーン家殺人事件」と比較するとやはり現代の作品だなぁと嘆息。歴史のなかで蓄積されたノウハウによって磨きあげられた安定感あるエンターテイメントミステリーといった趣。事件は「昆虫少年」と地域であだ名された問題児が少年を殺し女子大生を誘拐し逃亡。緊迫した状況のなか、地元警察はたまさか手術で現地を訪れた科学捜査のエキスパートであるが四肢付随のリンカーン・ライムに助力を仰ぐがというおはなし。文学文学せず書き様が達者で無駄がないのでストーリーにぐいぐい引き込まれてしまったのは作者が抜群に上手だからだろう。その上手さが鼻につくようなひねくれ者には最後の怒濤の展開は悪魔に魂を売りまくったのかように思えるのではと思った。私もおいおいと思わず吹き出した。作品の面白さを追求するとそうなるっちゃそうなるけれど、薄くなるところは薄くなる。でも、ウェルメイドなので口にしたいなぁというのが自分にとってのジェフリー・ディーヴァだなと。