映画「哀しき獣」

哀しき獣 ディレクターズ・エディション [DVD]

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「哀しき獣」が標題であり、これは言うまでもなく誰でも思いつくとおりこれは「人間」の別名である。映画は、中国大陸の端っこで始まる。韓国に出稼ぎに行ったまま帰らぬ妻。働いても働いても返せる見込みのない借金。不憫な何も知らないまだ幼い一人娘。日がなタクシー稼業で走ってお金を得てもストレスと供に麻雀に投じゼロにする自暴自棄。どうせ、よくなりはしない。よくなったらなぁ、でも、よくなりはしない。せめて、妻さえ戻ってくれば。そんな心の声が聞こえてきそうな生きる屍の日々を送る主人公グナム。ひょんな所からこいつならうってつけとミョン社長に目をつけられ韓国での殺人を依頼される。殺人は嫌だが、何よりお金はギラギラと心に迫り魅力的だし、何よりも唯一の生活上の希望である妻に会いにゆけるとグナムは 依頼を受け韓国に行くのだがというおはなし。グナムの次から次と状況に巻き込まれるだけのような、中身ががらんどうのような主体性の欠けた存在感には、考えさせられました。いわゆる主人公としては感情移入しにくいものの、極めてよくいるタイプのお前もお前もそうだろうという現実的なキャラクターじゃないかと思いました。抱え込んだトラブルの種類は違えど同じような行動を取る者少なからんと思います。むしろ、いわゆるグナムを巻き込む悪役たち、例えば、ミョン社長には、深い興味は抱きませんでした。画面にミョン社長が現れるとフレディとかジェイソンが現れた感じでアクションを楽しめましたが、悪役はどこか弱い方が魅力的なんだなと気づかされました。映画の終わり方としては、見ていてこっちもどうまとめるのこの風呂敷と思っていましたが置きにいった感じがしました。 保険で最後の列車のシーンが入れたように私には思えて監督が映画でメッセージを伝えたいなら列車のくだりは中途半端になるから切れよと思いました。