評伝ナンシー関「心に一人のナンシーを」横田増生

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」

評伝 ナンシー関 「心に一人のナンシーを」


ライフサイクルに沿って関係者たちのインタビューを挟みながら、筆者の「ナンシー関」論が述べられる形式。


作中で自身で述べているように筆者はサブカル畑の人間ではない。よってある種、部外者の立場から稀代のコラムニスト「ナンシー関」を語った評伝であり、それが本書の特徴の一つである。そのため、「距離感」と「よそよそしさ」が漂わずにはいられないわけで評伝の書くことの難しさを伝えているが、その事が筆者の誠実な姿勢を物語る証拠となっている。


他の感想にもあったが、ナンシーがあの体型でなければコラムを書いていないのではというようなニュアンスには、彼女が自分の立ち位置を決定する要素にそれがあったのは間違いないし、(文中の対談のなかで彼女は自らを「規格外」と見なしていると発言している。)立ち位置によって目線もまた定まるからだ。一方、何事かを書きたいという衝動は無関係に存在していたのではないか。


「テレビ評論」は因果な商売だ。批評のなかでも対象が「個人」であるものは何かと厄介だ。それに身を捧げるのだから「ポスト・ナンシー関」は現れにくい。 明らかに敵を増やしながら生きるという道を取るのだから